モルゲンベルクの鍛冶屋騎士

冨士宏『城物語』(マッグガーデン)読了ー。
10年以上前に月刊コミックゲーメスト(新声社)で連載・打ち切りになったままだった、まぁ幻の作品に描き下ろしを加えての初単行本化。 祝!


      城物語 (BLADE COMICS)

これも今はなき同朋舎出版(翻訳)の、ビジュアル博物館シリーズを彷彿とさせる、中世ドイツの山城と新米城主の物語…といいますか。 プロローグの仕掛け(企画持込みの上映とプロデューサー)からいろいろ泣かせる。
地味な生活描写や、中世封建社会に暮らすキャラ群像の捉え方が、ちゃんとエンターテインメントの領域に達しているのは流石。 目線がファンタジーの膜を取っぱらった学術・世俗的位置にあるのにね。


体よく厄介払いされた妾腹の少年城主の、珍しくも(いじけずに)クリアな視点と、己の未熟さをぐんにょり確認しつつの奮闘っぷりが、ゆっくりと周囲を巻き込んでいく様が心地よいです。
おんぼろ城内の老獪な実力者=フォン・ハルトが、腹芸も含めていい味出してる。


表紙からもうかがえるように男臭ーい荒くれ騎士世界な訳ですが、要所要所で敵をとるかのように女性のウェイトも上がります。 市井の鍛冶師奥方だった母親や、お隣の敵城(!)の妹姫君とか。 ←賢くも邪悪な猫気質
あと、増補企画案で映画『ドラゴンスレイヤー』(81年、マシュー・ロビンス監督)ちっくな従者を出してくるあたり、ツボを押さえすぎてて戦慄すら覚える。 本編でも可愛かったからな、従者カールきゅん。