雪桜うぇぶ・取材帖 



「出かけるぞ、アーシー!」
「……チェリーブロッサム・サインは、どこからも検出されていせんが? こひる殿。
それに武装も無しで?」
「なぁに、“めーる”じゃ。 取材じゃ!」


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「おぬしが手伝ってくれておる、アレな。 “雪桜うぇぶ”」
「ああ。 こひる殿の口述を、わたしが編集してweb上(*地球ローカル)で公開している記録集ですね」
「それのな。 “しんきんぐ☆食べある紀行”を気に入って、毎回読んでいるという編集者から、取材の依頼が来たのよ」



「…という訳で、おぬしには同行してもらって、カメラマン兼記録係を頼みたい」


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「で、どうでした」
「んむ…。 鮭のあぶり加減といい大根おろしのシャキシャキ感といい、申し分ない」
「煮物の味つけの素朴さと、豆腐コロッケの意外な洒落っ気もまた、“こんとらすと”が効いてて宜しいな。 ただ…」
「惜しむらくは、新米炊きのご飯が旨すぎる――ことかのぅ」
「?」
「ご飯がの。 ほのかな甘みと香りがあって、別格のおいしさじゃ。 おかずが要らん。 これの塩おにぎりだけでも、献立に加えられるのではないか?」
「それは…料理人として複雑なのでは」
「料理人ごろし、あるいは料理人冥利に尽きるところかの」


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メガハウス『和うさぎの甘味屋さん』より、「特製お弁当セット」。
これ、松花堂弁当というのか、十字の仕切りのある箱に、煮物・焼き鮭・揚げ物がそれぞれ器に盛られて収まっています。 ご飯は板一枚敷きの上に、うさぎ型から抜いて豆で目を入れて。 お盆がわりに敷いてあって見えないけれど、漆塗りの蓋にはうさぎ模様が刻印されていたり。


兎耳つき朱塗りの酒器が、足つきでハイカラな感じ。



酒(ささ)を一献。
大吟醸ニトロと、肩を並べる逸品じゃ」