ものまね鳥を殺すには(To Kill A Mockingbird)

というのが原作小説のタイトル。
アラバマ物語』(1962年、ロバート・マリガン監督)を観た。
30年代不況下の、アメリカ南部の田舎町で黒人トムの弁護をすることになった父親アティカス・フィンチ。 その年の出来事を、当時幼かった兄妹の視点と成長した娘のモノローグで描いていく。
いやもう、オープニングの秘密の箱の見せ方から格好いいんですけど。
子供なだけに平気で残酷な仕打ち――貧乏白人の子をバカにしたり――もするし、醜悪さや偏見とも無縁ではいられないんだけど、それでも真っ当に「相手の立場に立って」みることを辛抱づよく教え諭す父親の姿がよい。 もっぱら諭されたり家政婦に叱られるのは(語り手の)妹の方なんだけど。


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自分らも正邪の渦中にあってそんな背中を見てきただけに、
留置所裏口での兄妹の一言は、無垢な理想ではなく選びぬかれた弾丸として“意図的に”放たれたんじゃないかなぁ。 …とくに妹。
恥の意識は、アメリカに住まう人間にだってあるのだよ。


裁判所での最終弁論のシーン。 なんか変わったカメラ位置だと思ったら、画面向かって左手の陪審員席に向かって語っているのね。
さっき兄妹の視点と書いたけど、兄・ジェムが見ている事柄と妹・スカウトが見ている事柄は、同じじゃないのもポイント。


控えめクラシカルだけど、抜き身の部分で問題点をえぐってもくる名作かと。
理不尽にブレていく終盤以降〜の展開は見事。